大会長挨拶
〜補助犬と勤務犬、二つの足跡が紡ぐ一つの志〜
支え合い、より良い社会や命の輝きを目指すという一如(ひとつ)の強い志で結ばれることを願って
この度、第18回日本身体障害者補助犬学会の会長を拝命いたしました聖マリアンナ医科大学の北川博昭です。本学会は、視覚・聴覚・肢体不自由の方々の生活を支える法律で定められた補助犬たちの質向上と普及を目指し、障害を持つ方の生活の質を高め、社会参画を可能にすることを学術的に議論することなどが一つの目的です。
補助犬の中で最も歴史が古いのが盲導犬です。きっかけは第一次世界大戦下のドイツで、毒ガスで視力を失った多くの兵士達の自立を支援するため、1916年に世界初の盲導犬訓練学校がドイツに設立されました。日本での導入は1938年、アメリカから盲導犬を連れてきた旅行者がきっかけで、翌年にドイツから四頭の盲導犬が輸入されました。聴導犬は1981年に日本で初めて訓練が開始され、1983年に日本聴導犬協会が設立されました。介助犬は手足となるパートナーとして1992年に日本で初めて誕生し、車椅子生活を送る方々のQOL向上のために介助犬の有効性が広く知られるようになりました。本邦における歴史的転換点は2002年の「身体障害者補助犬法」の成立です。この法律の施行により、盲導犬・介助犬・聴導犬の3種が「補助犬」として公的に認められ、公共施設や交通機関、民間施設での受け入れが義務化され、社会全体での導入が本格的に進むこととなりました。この法律が成立するまでの道筋をつけ、最も強力に推進したのは元内閣総理大臣の橋本龍太郎先生でした。総理退任後も、身体障害者補助犬法の成立に向けて「超党派の議員連盟」の会長として、強力にリーダーシップを発揮されました。
一方、私どもの大学病院では、白血病に罹患したこどもさんの希望を叶えたい一心で10年以上前から勤務犬(ミカ、モリス、ハク)を日本介助犬協会の指導の下に導入し、自分の大学の医師、看護師にハンドラーとしての教育を行い、国で指定された補助犬とは異なりますが、特殊な環境で活動する「医療チームの一員」として多くの患者様の治療に結びつけることができました。本学会では、これら「動物を用いた介入」が、いかにして人間と医療をより深く、より温かくつなぐことができるのかを学術的に探求します。障害を持つ方々がより自由に、自分らしく生きられる社会のために、この学会を通じて「一頭の力が、医療と日常を変えてゆく」をキャッチフレーズに学会を開催させていただければと思います。「犬がそこにいる」ことが、いかにして「人が生きる力」に変わるのか。本学会が、従来の枠組みを打ち破る新たな知見の場となり、日本の医療・福祉に新たな彩りを与える契機となることを切に願っております。
日本身体障害者補助犬学会 第18回学術大会
大会長 北川博昭
(聖マリアンナ医科大学 学長)