国際シンポジウム

困難な事態にレジリエントなヘルスケアシステムの構築
Building resilience of healthcare system in challenging time

ヘルスケアシステムの発展は素晴らしいものがあり、現在は人々の健康問題への対応、疾病の予防などの需要に応じて十分な供給がなされる体制になっています。 しかし新型コロナウイルス感染症のような予期せぬ困難な事態によって、世界には崩壊に近い状態まで陥っている地域もあります。我々は新時代に対して想定される、あるいは想定されない困難な事態に対しても、打ち負かされないヘルスケアシステムを構築することを考えていくべき段階にきているといってもよいでしょう。 国際シンポジウムでは困難な事態に対してどのようにヘルスケアシステムを臨機応変に変化、応用していくか、ということを議論していきます。

日時:10月30日(土)9:05-10:55

Transforming health systems in ageing societies: building resilience to emerging health threats
演者:Rifat Atun
座長:福原俊一

Syndromic surveillance system using a smartphone for COVID-19
演者:山藤栄一郎
座長:濱口杉大

 2020年、新型コロナウイルス感染症が瞬く間に世界中へ拡がり、日本でも市中感染の拡大とともに医療現場での集団感染が問題となった。陽性者は隔離され、自宅待機者も増加し、病院の患者対応能力が低下するため、医療現場での対策が医療崩壊を防ぐ上で鍵になると当時の筆者は考えた。多くの現場で医療従事者は不足しており、発熱がなく体調不良という程でもなければ、休まずに働く例が稀ではないと経験から推測した。そのため、効率的な医療従事者の健康管理や、クラスターを早期検知する仕組みが必要であると考え、スマートフォンを用いた健康観察チャットの開発を富士通と共同で同年4月に開始した。
 開発に着手してまもなく、長崎で国内2事例目となるクルーズ船の集団感染を経験した。誰が感染者で非感染者かは当初わからず、1回だけの検査で感染者と非感染者を確実に区別することはできないため、全乗員を下船させて隔離の上で健康観察を行うことは実現不可能であった。そのため、全乗員をクルーズ船内で個室隔離して船内支援活動を最小限とし、遠隔で健康観察を行う方針となった。そこで、開発中の健康観察チャットを基に、クルーズ船専用アプリを急遽開発、導入した。その結果、遠隔で乗員の健康状態を毎日収集して、有症状者数の経時的減少、すなわち流行収束を確認することができた。
 この経験を元に健康観察チャットに改良を重ね、医療従事者のみならず、長崎県全体にこの症候群サーベイランスの仕組みをN-CHATとして導入した。N-CHATは個人の健康観察に加え、組織における有症状者数をグラフで可視化しながらモニタリングし、集団感染の徴候を早期に察知できるよう管理機能を強化した。さらに、有症状者を迅速検査に繋げる方法は、北福島医療センターでの運用を例として示す。
 このような症候群サーベイランスを用いて、地域で新たなヘルスケアシステムの構築を行い、ポストコロナ時代も視野に入れた取り組みを紹介する。

演者紹介

Dr. Rifat Atun
Professor of Global Health Systems at Harvard University and the Faculty Chair of the Harvard Ministerial Leadership Program


Biography
In 2008-12 he served as a member of the Executive Management at the Global Fund, Switzerland, as Director of Strategy. He is a visiting professor at University of Kyoto, Japan. His research focuses on health system performance, transformation and innovation. He has published more than 400 papers in leading journals, such as NEJM, Lancet, Lancet Oncology and JAMA. In 2020, he was recognized by the Web of Science as one of the World's Highly Cited Researchers.

山藤栄一郎 先生
福島県立医科大学 総合内科・臨床感染症学分野 教授
北福島医療センター 総合内科・感染症科 部長


略歴
山梨大学医学部卒業。亀田総合病院で研修後、同院総合診療・感染症科(後の総合内科)にて診療、教育の中心的役割を果たす。その後長崎大学熱帯医学研究所臨床感染症学分野助教としてリケッチア症研究、肺炎研究に携わり、2020年10月より現職。リケッチア症研究および多施設肺炎研究にて多数の執筆に関わる一方、厚生労働省新型コロナウイルスクラスター対策班のメンバーの一員として、長崎で停泊中のクルーズ船コスタ・アトランチカ号の新型コロナウイルス集団感染に対して、スマートフォンアプリを利用した健康管理システムを構築・導入し、効率的な感染対策によって感染収束に貢献した。


座長紹介

福原俊一
京都大学医学研究科 特任教授
Johns Hopkins大学 客員教授
福島県立医科大学 副学長

濱口杉大
福島県立医科大学 総合内科 教授
臨床研究イノベーションセンター 副センター長

協賛

一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院
公立岩瀬病院企業団
公益財団法人仁泉会
福島県厚生農業協同組合連合会白河厚生総合病院