第249回 日本循環器学会関東甲信越地方会報告
2018年9月22日(土)、ステーションコンファレンス東京において、第249回 日本循環器学会関東甲信越地方会(会長:東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 中村正人)が開催された。
一般演題、YIAなどのcompetition、教育セッション、セミナーに加え、高齢者診療を意識したhighlight session, coffee break sessionが特別に企画された。
8つの教育セッションの内容は、心筋梗塞の心筋バイオマーカー診断、高安動脈炎の新しい診療ガイドラインの解説、肺血栓塞栓症・冠動脈ステント治療における抗血栓療法、糖尿病の心血管合併症予防に関する薬物療法、そして治療デバイスとして、Heart Lightレーザーバルーン、NIRS-IVUS、ECMOなどと幅広く、明日から応用できる実践的な内容、講演であった。スポンサードセミナーでは最新のトピックス(1)ハートシートの開発経緯と臨床応用、(2)安定狭心症患者に対するOptimal PCIのワークフロー、(3)糖尿病合併循環器疾患におけるSGLT2阻害薬の今後の展望、(4)大動脈弁膜症治療に対する治療戦略の多様性、TAVIの費用対効果について講演があった。講演後には活発な討論が行われ、循環器診療における現状、今後の展開を学ぶことができる有意義なセミナーとなった。
今回、挑戦的な試みとして、 “笑いは心血管イベントの残余リスクを減少させるか?”というHighlight sessionを企画した。このセッションでは(1)イグノーベル医学賞を受賞した“心移植をしたマウスにオペラを聞かせると拒絶反応が抑えられる”の発表、(2)医師であり落語家でもある立川らく朝さんより“笑いと共に伝える健康情報”の噺をしていただいた。予後改善には既存のリスク因子管理のみでは不十分であり残余リスクがあることはよく知られている。この残余リスクとして“笑い”に焦点を当てた企画である。免疫能を高めることの効用に関する科学的検証、健康寿命のための“笑い”といった内容であった。時間の制限もあり、今回は無理であったが高座を用意すべきであったと後悔している。長寿化にともない癌罹患者数は増加し、新たな治療登場によって予後も改善してきている。このため、Coffee Break sessionではCardio-Oncology(腫瘍循環器学)という新しい領域の講演をお願いした。循環器医は癌と循環器疾患の両者の視点から診療を行うことが求められていることを再認識した。この2つの企画は直面する高齢者医療における新たな視点を提供したのではないかと考えている。
一般演題、選考演題の会場にも多くの方に参加いただき、活発な議論が行われた。また、いずれの演題も貴重な報告であった。4つの会場には朝から多くの参加者を認め、最終的には約1000名の参加者となり、盛会のうちに会を終了することができた。この度の関東甲信越地方会にご協力いただいた、諸先生方、企業の方々、事務局の方々には、改めて御礼を申し上げます。
東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科
中村 正人