大会長挨拶
持続可能な補助犬の育成を考える
視覚に障害のある人を導く犬の姿は、古代ローマのポンペイ遺跡にも描かれているそうです。人が犬とともに暮らしてきた長い歴史の中で、ともに支えあい生まれてきた自然なかかわりの中から盲導犬をはじめ、多様な犬の役割が見出されてきたのでしょう。そういう意味で、犬と人の協同作業は数千年、数万年の時を経ても変わらない犬と人の絆の賜物ともいえます。
一方、科学技術が日に日に発展する現在、補助犬の役割の一部を担うような技術が利用可能になりつつあります。自分が思い描いた未来を歩むために、多様な選択肢があることは、人々の未来をより豊かにすることでしょう。そのため、科学技術が発展する中においても、数千年以上にわたり継続してきた犬と人の関わりから生まれた補助犬という選択肢も、引き続き利用可能であり続けることが期待されます。
そのためには、補助犬の育成に携わる人々の働き続けやすい環境にも配慮する必要があるでしょう。また、補助犬の生活(福祉)に対してもより一層の配慮が求められるでしょう。今後も補助犬を利用できる社会であり続けるために「持続可能な補助犬の育成」を考えるときだと思い、本大会のテーマを設定しました。補助犬の育成に関わる方はもちろん、補助犬と生活する方、補助犬から派生して生まれた犬とかかわる方、その他多くの方々と一緒にこの大切なテーマについて考えていきたいと思います。2019 年から4 年ぶりの完全対面での開催です。多くの皆様と直接お会いできますことを、心より楽しみにしております。
日本身体障害者補助犬学会 第15回学術大会
大会長 山本 真理子
一般社団法人 日本身体障害者補助犬学会 理事
帝京科学大学 生命環境学部アニマルサイエンス学科講師