大会長挨拶

 この度、日本臨床疫学会 第4回年次学術大会を開催するにあたり、大会長の任を仰せつかりました福島県立医科大学総合内科の濱口杉大と申します。

 今回の年次学術大会のテーマは「原点回帰―患者に始まり、患者に還る」でございます。 近年、ビッグデータ解析や特殊な統計手法の進歩により、今までできなかったリサーチクエスチョンの可視化がなされるようになりました。これまで1つ1つのデータを臨床現場から手作業で集めていた時代から、人間の手作業では対応できないくらいの大量のデータ収集がほぼ自動的におこなわれ、まさに代表サンプル解析ではなく母集団解析に近い状況を実現できる時代になってきたと言えます。統計解析法の進歩も著しく、コストや倫理的なハードルのあるランダム化比較試験に対して、観察研究で肉薄するように、傾向スコア法、操作変数法をはじめとして、データベースから自らのResearch questionを表現する方法が飛躍的に広がったと言ってよいでしょう。

 その一方でデータベースと統計ソフトさえあれば一定レベルの臨床研究が可能なため、臨床医でなくとも臨床研究ができてしまう時代になったとも言えます。

 振りかえると、我々は基本的には医療現場で働く臨床医であるため、日常臨床を通じて目の前の患者や医療現場から差し迫った疑問を感じ、そこから臨床研究のResearch questionが生み出され、それを解決するために臨床研究をおこなう、ということが基本姿勢です。今回の年次学術大会では、臨床医の基本である「目の前の患者からはじまるリサーチクエスチョン」という考え方をもう一度見直す大切な場として、大いに議論したいと考えております。

 完全オンラインで、4つのチャンネル(Main theater、Learning theater、Working theater、Presentation theater)を準備しました。Main theaterでは大会テーマにちなんだ国際シンポジウム、特別講演など、Learning theaterでは臨床研究に関わる様々なレクチャー、Working theaterではハンズオンなどの実習、Presentation theaterでは最優秀賞(Young Investigator Award)を決定する口頭一般演題発表など、が行われます。

 臨床研究に関して比較的ビギナーの方から現場で指導をされている方まで広く勉強ができる、かなり充実した内容となっておりますため、ぜひ参加の上、楽しく勉強していただければと思います。

日本臨床疫学会第4回年次学術大会
大会長 濱口 杉大
福島県立医科大学 総合内科、臨床研究イノベーションセンター